生存バイアス:なぜあの人のやり方で私が成功できないのか?(太田出版)

みなさん宝くじは買いますか?私はサマージャンボだけは連番で10枚だけ買うことにしてるんです。宝くじで1億あたった人の特集で紹介されていた買い方の一つなんです。

生存バイアスは生き残った人の発言は必ずしも客観的とは限らないという意味です。

宝くじにあたった人、ここでは吉田さんとします。吉田さんが「神保町の角の宝くじ売り場で9時頃宝くじを買ったらあたった!」といったとします。18時のニュースに合わせるためテレビ局が取材にきます。Youtuberもその宝くじ売り場で買うかもしれません。

そこでみんなが影響されて宝くじを神保町で買うことになります。
さてみんな当たるでしょうか?

当たらないですね。むしろ全員「はずれ」になって300円払い戻しになる可能性が高いと思います。

なにが悪かったんでしょうか?吉田さんは事実を言っているのです。悪気はありません。本当に「神保町の駅の角の宝くじ売り場で買ったのでそれで1億円あたった」のです。それを周りの人に言っただけなのです。

ここで悪かったのは他人がその時にうまく行ったからといって自分もそのやり方でうまくいくとは限らないのですね。宝くじという低確率のくじで、しかも運が強力に作用するような仕組みで同じやり方で行ったからといってうまくいくはずはありません。

「死人に口なし」ということわざがありますね。死んでしまった人は発言できないので死んだ人が何が言いたかったのか後からわかりません。成功した吉田さん以外で宝くじを買った人は、みなさんはずれてしまったのですが、はずれたので悔しいからか発言しません。
発言したのは1億円があたった吉田さんだけです。多数いる失敗者は成功者の影に隠れてしまうので、成功者の意見のみを鵜呑みにしてはいけないのです。これが生存バイアスです。

生存バイアスを投資で考えてみるとどうなるか
多くの雑誌や報道、お小遣い稼ぎのサイトが「この方法でうまくいく」という方法を紹介しています「ゴールデンクロス」「太陽黒点」「周期」「反転ポイント」「ドルコスト平均法」「楽ちん投資」「チャート」

しかし、その多くは宣伝といってもいいような内容です。皆が皆、何らかの方法で成功した人たちが喧伝します。「この方法だからうまく行った」と。しかし、そのやり方をやったからといってすべての人がうまくいくわけではありません。成功した人はその成功したタイミングで、その成功したした人がやったからこそ、うまく行ったのです。もしかすると成功した人間がもう一度やってもうまくいかないかもしれません。ただ運が良かっただけなのかもしれないのです。さてあなたはこの方法でうまくいくでしょうか?

生存バイアスにとらわれないために

1,期待値で考える
生存バイアスにとらわれないために必要なことは「期待値」や確率で考えることです。ちょっと考えれば宝くじを一定のやり方で買ったとしても、全員が当たらないことに気がつくはずです。

宝くじの1等賞が当たる確率は1,000,000,000の1(十億分の1)だとします。そうするとまず宝くじの発行元である銀行が半分をとりますね。5億です。このときにもう既に期待できる利益の値はもう半分の5億となります。
10億円かけて全ての宝くじを購入しても5億円しか
この中からさらに抽選であたる確率から計算すると、、、

期待値の計算方法は
期待値=その活動での全ての利益÷その活動での全ての費用
ですからこれを当てはめると戻ってこないのです。

5億円÷10億円=0.5となります。

期待値は0.5。この数字は確率的には賭けた金額の半分しか戻ってこないことを意味します。900円分で3枚の宝くじを購入したら450円しか戻りません。

はたしてその投資は正しいのでしょうか?
ただしいとは思えません。。
期待値1で投資に耐える投資であると思います。

2,決断の重要性で考える。
同じ100万円でも一億円持っている人と、200万円持っている人では100万円を投資するときの意味や、100万円を再び作るときの難しさは違います。その投資決断をするときの影響金額を見積もってみましょう。
その金額を失うと精神的に耐えられないような金額であるならば、あるいは人前で失敗して失うことを公言することを躊躇するような金額であるならばかなり重要なので、その投資行為を行わないという決断も必要です。

3、成功者の発言は参考に止めておく
成功者の発言は参考に止めておくことも重要です。成功者は一定の方法論の下、努力したことを成功の原因としますが、努力が必ず報われるとは限らないのです。
「成功者が努力のせいにすることは、失敗者が運のせいにするほど簡単である」ということわざがフランスにあります。
成功者の意見は参考にとどめましょう。
失敗者の意見は失敗する必然性にあふれている可能性があります。失敗者の経験談は熟考しましょう。

生存バイアスに希望を見いだす。大切なのは「自分で決める」ということ

成功しているこのひとのいうことを聞いてもだめ、あのひとの言うことを聞いてもだめ。ではわれわれは懐疑的になって一切の投資を伴う行動をしないほうがいいのでしょうか?

生存バイアスとは「こうしたからうまく行った」という「過去の事実」から未来のことを推測することは出来ないということです。
しかし逆に考えれば、過去にどのような事実があったとしても「次の違った方法」が絶対に正しくない言えないのです。
未来が決まっていない。そこに希望が見いだせないでしょうか?
確定的な未来なんてつまらないでしょう?
生存バイアスはこのようにこそ読むべきだと思います。

大切なのは自分が成功できる期待値を考えながら、不確定な未来を自分の意志で決定してゆくことなのです。

投資を算数と確率で考える